FISPA便り「オンラインでの経営トップ合同会議」

 毎年、11月のこの時期には、繊維ファッションSCM推進協議会(FISPA)の活動にとって、重要な「経営トップ合同会議」が開かれます。出席者とオブザーバー、マスコミを含めると100人近い人が集まるので、コロナ禍での開催が心配されましたが、11月26日にオンラインで無事に開催されました。オンライン開催はもちろん、初めてです。「初」と言えば、同協議会の会長に大澤道雄オンワード樫山取締役会長が就任して「初」の会議です。

 オンライン会議は、従来の対面より所要時間を短縮して、約1時間半行われました。事業計画では、FISPAの使命である取引適正化に向けて「聴き取り調査の実施」、「歩引き取引の廃止」、「取引ガイドライン・自主行動計画の普及・啓発」を引き続き進めることで一致しました。従来からの継続事業ですが、ぶれずに愚直に取り組むことになりました。

 同会議では、出席企業から意見の表明があるのが恒例です。今回は、こんな意見表明が目立ちました。コロナウィルスの感染拡大によって、繊維・ファッション産業も大きな打撃を受けています。しかし、会議での発言者は、コロナによる売上不振、苦境には触れたものの、その一方では、働き方改革の流れの中で、新しい仕事の進め方に挑んでいる、との報告やSDGs(持続可能な開発目標)に合致した製品開発、CSR(企業の社会的責任)に努めている、といった前向きなものです。

 コロナによる売上不振で苦境を訴え、場合によっては「不適切取引」の事例が出されてもおかしくない状況ですが、そうではなく、苦境下でも改革に挑んでいることが表明されました。参加企業は、川上から川下までのSC(サプライ・チェーン)を構成しているリーディング企業ばかりです。リーディング企業だからこその取り組みかも知れませんが、繊維・ファッション産業界の大きな流れになっているとしたら、極めて好ましい動きです。

 経営トップ合同会議は、公開の場で参加企業が真剣に討議し、決定したことは責任をもって実行する、というめずらしい会議です。新型コロナウィルス感染拡大の第3波の渦中で行われた初のオンライン会議。ポストコロナを見据えて、適正取引の推進はもとより、会議で表明された「改革」を実行し、時代の要請に合った姿を模索するうえでの刺激になったとすれば、会議の思わぬ成果だと言えるのではないでしょうか。             

 (聖生清重)