FISPA便り「コロナ禍だからこそ笑い」

 ミャンマーでクーデターが起こった直後の読売新聞のコラム「編集手帳」(2月4日付)で興味深いことを知りました。桂文珍さんは、約6年の自宅軟禁が解かれたばかりのアウン・サン・スー・チーさんに会ったことがあり、その際、「軟禁中にお笑いになることはありましたか?」と聞いたところ、スー・チーさんは「毎日笑っていた」と答えたそうです。

 軟禁でイライラしている自分をもう一人の自分で眺め、なるべく声を出して笑うようにしていた、とのことですが、このコラムを忘れなかったのは、長引くコロナ禍で多くの方が「イライラ」しているであろうこと、そのイライラをどのようにして解消しているのだろう、との連想がわいたからです。

 コロナ禍での生活は、外出や人との交流を極力、減らさざるを得ない不便な生活です。軟禁、といってはオーバーですが、“軟禁状態”だと感じる人も少なくないでしょう。仕事で出かけざるを得ないビジネスパーソンのストレスも溜まるばかりだと推察されます。

 だからこそ、コラムで知った、自宅軟禁中のスー・チーさんの「笑い」が印象に残ったのです。「笑い」は、人の気持ちや気分、つまりは心のあり様に大きな好影響を及ぼす、ということです。スー・チーさんのように、声を出して笑っているのでしょうか。ちょっと想像してみればわかりますが、イライラして落ち着かない自分より、声を出して笑っている自分の方が良いに決まっていると言えるでしょう。

 そう思って、ネットで「笑い」や「笑いの効用」を検索すると、実に多量の情報に出合いました。笑いに関する本も多数、出版されています。「笑い」と言えば、テレビ番組の「笑点」は長い間、人気を保っています。人々はいつの時代でも「笑い」を求めているのでしょう。

 しかも、「笑い」は、こころの安定だけでなく、身体にも大きな好影響を与えることがあるとの実話をもとにした本を読みました。「笑いと治癒力」(岩波現代文庫)という本です。米国有数の書評・評論誌「サタデー・レビュー」の編集長を30年つとめたノーマン・カズンズ(1915-90)氏が不治の難病を「笑い」によって克服した闘病体験をもとに、人間の自然治癒力を取材し、笑いとユーモア、生への意欲が奇跡をおこすことを例証したものです。

 カズンズ氏は同書で「ドタバタ劇の映画を見たり、ユーモア作家の本を読んで笑った」と記しています。自然治癒力は「『生への貪欲さ』と『医師との信頼関係』の両者がそろった時に、最大限発揮される」と書いていますが、「笑い」の効果も大きかったようです。

 ステイホームの連休。「笑い」を忘れないようにしたいものです。

(聖生清重)