FISPA便り「みやしん、研究所で復活」

 12年10月3日付のこの欄で触れた八王子のテキスタイルメーカー、みやしん(宮本英治社長)の工場施設がファッションテキスタイルの研究所として人材育成や創造的なテキスタイルの開発などに生かされることになりました。

 みやしんが廃業を決めた後、同社はSPAチェーン企業やアパレル企業などに引き受けを打診しましたが実現せず、文化学園(大沼淳理事長)が土地・工場施設を取得し「理想的な形で残る」(宮本社長)でことが決まりました。

 みやしんの工場は、文化学園付属の「文化・ファッションテキスタイル研究所」として生まれ変わります。事務所の内装工事が終了する今月中旬か下旬には、研修生や見学者の受け入れを開始する予定です。

 研究所はついこの間まで現役の工場でしたから、レピア織機など織機15台のほか、糸繰り機、コンピューター整形機が完備していますし、名門テキスタイルメーカーだったみやしんには、同社ならではの「立体織物」を含む織物見本など膨大な資料が残されています。ファッション・クリエーションにとって、重要性が高まっているテキスタイルからのクリエーションに格好の舞台が用意されていると言えるでしょう。

 しかも、ファッションテキスタイル研究所長には、文化ファッション大学院大学教授でもある宮本さんが兼任で就任し、みやしんの主力社員2人と一緒に運営に当たります。実践的で本格的なテキスタイル研究所です。

当面は、文化学園グループの文化服装学院、文化学園大学、文化ファッション大学院大学の学生の学習、実習に活用することになりそうですが、将来的には全国の産地の繊維中小製造業者の後継者育成やファッションデザイナーから受託する創造的なテキスタイルの開発などにも活用する構想が膨らみます。

日本の産地テキスタイルは、パリのラグジュアリーブランドに多くの中小テキスタイルメーカーの生地が採用されている事実に象徴されるように、日本人の繊細な感性と匠の技から生まれる創造的かつ高度な組織・品質の高さが評価されていますが、一方では生産額など規模の縮小に歯止めがかかっていません。それだけに「ファッションテキスタイル研究所」が日本テキスタイルの拡大再生産への道を歩む起爆剤になることを期待したい思いです。 

  (聖生清重)