FISPA便り「豪奢品で考えたこと」

 コロナ感染拡大を抑えるための商業施設の休業をめぐって、久しく忘れていた言葉を思い出した方も多いのではないでしょうか。「豪奢品」です。人によっては「奢侈品」の方がピンとくるかも知れません。要は「ぜいたく品」のことです。

 東京都などへの緊急事態宣言が6月20日まで延長される際、大型商業施設の営業について、東京都は百貨店などに休業を延長するよう求めました。休業によって人流を抑制したい行政と感染対策に万全を期したうえで営業したい商業施設の間で綱引きがありましたが、結果は東京の場合、土日曜日は休業、それ以外の日は時短とすることになりました。その際、生活必需品の範囲をめぐって飛び出した言葉が「豪奢品」でした。

 「豪奢品」は「奢侈品」とほとんど同義で、生活必需品の範疇には入らない物品・サービスのことですが、その奢侈品にはついこの間まで税金がかかっていました。奢侈税です。宝石やピアノ、高級呉服などが対象でした。筆者も新米の繊維記者だった時、高級呉服に奢侈税がかけられていて、業界団体が奢侈税の対象から除くよう、政府に要望していたことを記事にした記憶があります。
1989年、消費税の導入に伴い廃止され、現在にいたっています。

 以下は、まったく個人的なつぶやきです。「コロナという緊急事態で突然、浮上した豪奢品なる言葉。少子高齢化で社会福祉費用がかさむ中で財政再建を迫られている日本。税収アップのために、仮に奢侈税復活を議論するとなると、それはもう、大激論になるのだろうな…。ぜいたく品は、庶民感覚では生活必需品ではないが、人によってはそうではないかも知れないかも…」
「そう言えば、ある百貨店には『ごほうび』と言う言葉があったなあ。呉服、宝飾品、美術品の頭文字をとった言葉で、言わば奢侈品のことだった。呉服は需要減少に苦しんでいるが、奢侈品としてではなく、民族の伝統衣装としてしっかり残ってもらいたいなあ」。

 やや飛躍しますが、もう一点、豪奢品から連想したことは事業者団体の役割です。「産業が強くなければ企業も強くならない」と持論を述べていた、日本繊維産業連盟会長で旭化成の大物社長だった、故・宮崎輝さんは、税制に関して政府に必要な要望を行うことは事業者団体の重要な役割だ、と常々話していました。

 緊急事態宣言に伴う商業施設の休業問題では、日本百貨店協会、日本ショッピングセンター協会は国や東京都に休業緩和を要請しました。これも事業者団体にとっては、重要なことです。6月は、多くの企業だけでなく、事業者団体も総会の時期です。自分たちの声を社会、政府に届けるという大事な役割を確認すべきだと思います。

(聖生清重)