FISPA便り「コロナ禍の2020年アパレル供給量は10%減」

 新型コロナウイルスによって、社会生活や経済活動が翻弄された2020年。コロナとの戦いは、まだ、続いていますが、毎年、この時期に発表される統計でコロナ禍におけるアパレル製品の供給状況がどう変化したのかが明らかになりました。

 日本繊維輸入組合の「日本のアパレル市場と輸入品概況」と題した調査報告は、アパレル製品の総枠を知ることができる格好の統計です。その2021版によると、国内供給量、輸入とも10%減少しました。百貨店など大型小売業の休業や時短、外出自粛、インバウンド需要の消滅などアパレル消費には逆風が吹き荒れた1年でしたから、当然の結果と言えるでしょう。

 2020年のアパレル製品(外衣、下着、補正着、寝着、乳児用の合計)の国内供給量は35億7280万点で、前年比10.3%の減少でした。国内供給量はかねて、過剰との指摘がなされています。環境問題に関連して「衣料品の廃棄」が問題視されてもいます。1億2000万人の日本の人口に対して、供給量は多すぎるのではないか、との指摘は、その通りだと思います。 だからこそ、コロナ禍での需要減と合わせて供給量が注目されるのですが、やはり、というべきか10%強の減少という結果でした。

 供給の中心である輸入は34億9900万点で、前年比10.4%の減少でした。輸入浸透率は97.9%で前年より0.1ポイント下がりましたが、ほとんど同じです。輸入の減少がそのまま、国内供給量の減少に結び付いた形です。輸入浸透率は「輸入量÷国内供給量×100」の数値です。98%前後という数字は驚異的だと思うのですが、繊維ファッション業界人は、もはやその数字に驚かなくなっているのが実態でしょう。「これがグローバル経済なのだ」と。

 一方、国内生産量は8179万点で前年比6.4%の減少となっています。減少率は輸入の減少率より低いものですが、この数字が示している意味は「国産品は希少品」でしょう。8179万点には下着なども含まれていますから、アウターに限れば、希少性はさらに高いことになります。コロナ禍で一時、マスク需要が急増し、供給不安が取りざたされました。その際、「国産」の重要性が叫ばれたことは、ついこの間のことです。輸入に大半を依存しているアパレル製品の供給の現状をどのようにとらえたらよいのでしょう。

 コロナ感染の今後ですが、ワクチン接種の進展につれて、事態が改善する期待が高まっています。アパレルを含む消費が急増するとの見方も出ています。しかし、繊維ファッション業界の積年の課題である過剰供給を改善するとの方向性を失わないよう、くだんの統計は無言で語っているのではないでしょうか。

(聖生清重)