FISPA便り「アジアファッションの未来」-AFFシンガポール大会から-①
シンガポールの挑戦(上)
目指すはファッション市場のハブ
日本ファッション協会(馬場彰理事長)などで構成するアジアファッション連合会(AFF)のシンガポール大会が去る5月16、17日の両日、シンガポールで開かれました。日本、中国、韓国、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国で構成するAFFは、加盟各国の相互理解・交流、アジアファッションの世界発信、ビジネス促進などを目的に2003年に東京で発足。各国持ち回りで開く年に1回の大会は今回で10回目です。
今大会で最も印象に残ったことは、ホスト国、シンガポールのファッション産業に賭ける熱い思いでした。シンガポールの街の目ぬき通りには、「アジアファッション・エクスチェンジ」(AFX)の文字を印刷した垂れ幕が懸り、ロータリーには同じ文字が入った丸い街灯が灯っていました。
人口はわずか500万人強で資源もない都市国家にとって、ファッション産業の振興は国の未来を担うことができる有力な産業なのでしょう。5月13日から19日まで開催されたAFXの期間中、AFF大会のほか、特設テントでの各種ファッションショー、新人育成のためのファッションショー、アパレル製品の展示商談会、世界のオピニオンリーダーが講演する国際シンポジウムが併催されました。
街中の垂れ幕や特設テント、パンフレット類には、自動車メーカー「Audi(アウディ)」の文字が印されていました。ニューヨークや東京のコレクションショーのスポンサーであるメルセデス・ベンツに対抗する戦略なのでしょうか、シンガポールのファッションイベントに相当額の支援を行っています。「スター・クリエーション」は、新人デザイナーの育成が目的のショーですが、その会場も特設テントでした。
シンガポールは、アジアの航空交通の要衝です。同国には、国内にテキスタイルやアパレルの製造業がありません。しかし、生産なら周辺にある優れた製造拠点を活用することができます。世界で活躍できるクリエーション人材を育成すれば、ファッションハブの座をつかむことができる。そうした国家戦略がAFXに具現化しているようです。
(聖生清重)