FISPA便り「アジアファッションの未来」―AFFシンガポール大会から―②

シンガポールの挑戦(下)

パルコの若手支援と女性起業家

 ひとつの売場とひとつの講演がシンガポールの今を象徴しているように思えました。まずは、ひとつの売場。シンガポールパルコの一角にある、若手デザイナーのビジネスを支援する「パルコ・ネクスト・ネクスト」です。開設は3年前で、パルコが自主運営する売場ですが、シンガポール政府の中小企業支援機関からの支援も受けています。支援期間は5年。支援額は政府の意向で公表していないとのことでした。

 現在は、21組の商品を180坪のショップ内に並べています。毎年、ブランドを入れ替え、平均して20~25組のデザイナーブランドを扱っています。デザイナー自身が売場に立つ一方、昨年は一部ブランドを2週間の期間限定で東京・渋谷パルコでも販売しました。

 ブランドの選択を含めた運営では、シンガポールのテキスタイル&ファッション協会「TaF.f」が協力しています。同協会の会長はAFFシンガポール委員会委員長でもあるデビッド・ワンさんです。

 支援の対象はシンポール人であること。政府の資金を投じているためですが、シンポール政府がシンガポール出身の世界的なデザイナーの発掘・育成に力を入れていることがうかがえます。

 講演は、AFFセミナーのひとつで、講師はシンガポールの新進企業、フロントランナーの代表取締役、アン・コシチョティティーナさん。米国在住20年のキャリアを生かして設立した会社は、同じく在住20年の韓国人と出会ったことで、両者の協働によるアパレルブランド「ヘッドライン・ソウル」を昨年4月に生み、すでにシンポールのほか、クアラルンプール、韓国にも出店、来年はタイ、インドネシア、中国に出店し、2年後には米国、豪州にも出店するとのことでした。

 「韓国のホットなファッションに国際感覚を盛り込んだブランド」は「文化交流から生まれるクリエーション」で、韓国人以外でもフィリピン人との協働作業によるショップをマニラにオープンしているそうです。

若手デザイナーの育成と文化交流によるブランド開発。キーワードは起業です。 

                           (聖生清重)