FISPA便り「アジアファッションの未来」―AFFシンガポール大会から―③

最後のフロンティア、ミャンマー(上)

投資ブームに沸く

 民主化と経済改革が急速に進むミャンマー。三井物産の朝比奈志郎ヤンゴン事務所長は、軍政時代で街のあちこちに兵士の姿があった3年前にミャンマー最大の都市ヤンゴンに赴任、この間の変化を目の当たりにしてきました。同氏は、ミャンマーの状況をこう見ています。「ヤンゴンは、バンコクに30年、ジャカルタに20年、ホーチミンに10年遅れていますが、追いつくスピードはこれらの半分かそれ以下でしょう」。かつて、中国の変化を中心にした国際社会の変化は“ドッグイヤー”と形容されましたが、ミャンマーの変化のスピードは“分刻み”と形容できそうです。

 ミャンマーの魅力は、豊富で低廉(中国の5分の1)な労働力、地頭がよくまじめ、親日的、治安のよさ(朝比奈さんが赴任して以降の3年間で殺人事件は1、2件とのこと)、豊富な資源などです。

 実際、中国、韓国、タイなどがエネルギー関連投資を活発に行う一方、低廉・豊富な労働力が活用できる縫製業への投資も増加しています。日本からは、縫製で大栄既製服、伊藤忠、マツオカコーポレーション、ハニーズがすでに進出しています。昨年4月に進出し、黒色のチノパンの専用工場を稼働させているハニーズは初年度から黒字で、今夏、第二工場を稼働させる予定とのことです。他社も軒並み増設を計画しているようです。

 低コストを求めて地球の各地へ移る縫製産地。中国一極集中のリスクを回避するために中国以外にも縫製拠点を確保する「チャイナプラスワン」の候補地として、ベトナム、バングラデシュが名乗りをあげ、現に多くの日本企業が進出していますが、ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」として、「チャイナプラスワンプラスワン」の役割を果たすことになりそうです。

 課題がないわけではありません。政治的には「暗黒の時代には戻らない」(朝比奈さん)とみられるものの2015年11月の総選挙がターニングポイントになりそうですし、現状でも電力不足が深刻です。それでも敬虔な仏教徒で明るいミャンマー人は、課題を克服することでしょう。 

     (聖生清重)