FISPA便り「コロナの影響で就職率も低下」

 ワクチン接種の進展で期待される社会経済活動の正常化の歩みが遅々としているなか、ファッション業界の新卒の就職戦線にも悪影響がでていることが繊研新聞の調査で明らかになりました。

 全国の服飾専門学校対象のアンケート(有効回答38)によると、2021年春の卒業生の就職率は大幅に低下しました。就職希望者の就職率は、19年、20年は回答校の55%以上が「100%」、「90%以上」が80%以上だったのに対し、21年は「100%」の回答は42%、「90%以上」は55%にとどまっています。「80%未満」の学校が3分の1以上で、1校は「39.3%」とのことです。

 同紙ではこの結果について「東京や大阪の大規模な有力校や就職実績の高い中堅校も70%前後か50%台に落ち込んだ。一方、100%が6校あり、中京地区や熊本ほか地方校や都心部の小規模校が中心だった」と報じています。

 コロナ感染拡大が収まらず、しかも長引いている状況下、ファッション業界も需要収縮に直面したままです。ネット通販に活路を見出す流れが続いていますが、店頭販売の減少を補うには至らないのが多くの企業の実情でしょう。先行きが見通せず、かつ、コロナ感染が収束に向かっても市場規模はコロナ以前には戻らない、との見方が支配的です。

 ショッピングを含む移動の自由が制限され、ファッションを楽しむ「場」や「機会」も失われたままです。市民生活、企業活動に制限がかけられている状況では、人材投資を抑制せざるを得ないのでしょう。ちなみに、厚労省と文科省の共同調査による21年春の卒業者の就職率(5月発表)は、大学(62校)が前年同期比2.0ポイント減の96.0%、専修学校(20校)が同2.0ポイント減の95.8%となっています。

 数字は嘘をつかない、と言われますが、ファッション業界への就職状況の調査結果は、普段、感じている人材投資の実態を反映しているように思えます。

 「事業は人なり」はいつの世でも真理で、誰もが、そう思っていることでしょう。やがてコロナが収束した時には、一転して「人出不足」に悩まされるかも知れません。そうは言っても、現下の厳しい状況下では、不要不急な費用は可能な限りカットし、生き残りをはかることを優先することはやむを得ないというべきなのでしょう。    

 しかし、厳しい状況下での新卒者の採用では、質的には将来が楽しみな若者を多く確保できたのではないか、と思いたいのですが、さて、どうでしょうか。

(聖生清重)