FISPA便り「アジアファッションの未来」―AFFシガポール大会から―⑤
ポスト10周年のAFF
課題はビジネス促進
AFF(アジアファッション連合会)が年1回、各国持ち回りで開く大会は今回で10回目。AFFの目的は、加盟各国の相互理解・交流、アジアファッションの世界への発信、ビジネスマッチングの促進です。日中韓にシンガポール、タイ、ベトナムの加盟6カ国の相互理解・交流は大きく進展しました、アジアファッションの世界の発信も着実にステップアップしていると思います。
年次大会では、各国代表者会議、各国1人の若手デザイナーのショー、現地専門家によるセミナーなどが行われます。このうち、各国が推薦した若手デザイナーによるショー。今回、日本からはレディー・ガガの衣装を手がけたことで知られる森川マサノリさんがメンズ中心の最新作品を披露しました。黒地に黒糸の刺繍を施した服は、現代の鎧のようで、それでいて実に優美。身びいきなしに、他の5カ国のデザイナーの作品を圧倒する完成度の高いクリエーションでした。それは会場の空気、ショー終了後の拍手でも、さらには今大会のホスト国のファッション産業団体・デザイナー団体の会長でもある、デビット・ワンさんをして「私も欲しい」と言わしめたことで証明できるでしょう。しかも、森川さんのブランド「クリスチャン・ダダ」は、地元の高級セレクトショップから引き合いがあったそうです。
AFFを踏み台にして世界に飛躍するデザイナーが出現すること。それが、結果としてアジアファッションの世界への発信につながるのですから、6カ国の若手には一層の奮起を期待したいと思います。
代表者会議では、日本代表の平井克彦日本委員会委員長(東レ相談役)が提案したワーキンググループの設置で合意しました。AFFウェブサイトを活用したビジネスマッチングの仕組み、活動のテーマとなる生活文化では具体的にどんなテーマをとりあげるべきか、などを検討することになりましたが、ポスト10周年の活動では、ビジネスマッチングを促進する知恵が一段と求められていると言えるでしょう。来年の大会は3月にタイで開かれることも代表者会議で決まりました。
(聖生清重)