FISPA便り「ならば、どうするのか」

 繊維ファッションSCM推進協議会の活動のひとつに「取引改革委員会」での悪しき取引慣行の是正がありますが、同委員会は原糸、織物、ニット、染色、織物卸、縫製、商社・専門商社、インテリアファブリックス、インナーウエア、アパレルなどの団体の幹部が出席し、当該業界の現状や課題、トピックス、取り組んでいる事業などを報告するのが慣例で、川上から川下までの「今」が俯瞰できること、経産省繊維課の担当官が出席していて、業界から行政への要望や行政から業界への情報伝達も行われるといった利点もあります。

 その取引改革委員会が去る6月20日に開かれました。各業界が表明した繊維ファッション業界の「今」は、どのような状況なのでしょう。景況感は「アベノミクスの効果は地方まで波及していない」(縫製)なか、円安で「中国生産品のコストアップを懸念している」(インナーウエア)、「原料高・製品安で厳しい」(毛紡織)、「天然ガスなどのエネルギーコストの高騰で大変」(染色)などの意見が表明されました。消費増税でも多くの業界が転嫁難を心配しています。

 残念なことは、業界規模の縮小が止まっていないことです。長繊維織物、染色、靴下、織物卸などの業界から「会員会社が減少している」とのことです。加えて、「自社企画・自社販売に努めているが、小売りからの返品と(自家工場を持っている企業は)工場の安定操業に困っている」(ニット)といった、積年の悩みに直面している現実も報告されました。

 「特殊な商品を作って小売りに直販しているメーカーは健闘している」(ニット)、「呉服市場に下げ止まり感が出てきた」(織物卸)、「染工場の職人と若手デザイナーのコラボで開発した商品を商業施設で即売している」(染色)など前向きな動きも報告されましたが、全体的には「厳しい」状況が続いているようです。

 「ならば、どうするのか」です。下請け・賃加工に依存している繊維ファッション関連の中小企業が生き残る道は、「脱・下請け賃加工」でしょう。2003年から5年間取り組んだ「中小繊維製造業者の自立事業」の精神と当時の熱気を再度、取り戻すべきではないでしょうか。        

(聖生清重)