FISPA便り「アートですっきり」

 今年もまた、ゴールデンウイーク(GW)が近づいてきました。本来は待ち遠しいGWですが、現下の状況は、コロナ感染の高止まり、暗鬱なウクライナ情勢、中国の感染拡大と上海など大都市の封鎖、円安、エネルギーや食糧などの輸入価格上昇。要するにコストアップ要因が目白押しです。

 楽観できる時代は短く、世はとかく不安材料に満ちている。いささか悲観的にならざるを得ないような難題が山積していますが、その一方で、季節は、新緑のやわらかく、やさしい美しさに満ちています。

 多くの地域では、カタクリなど早春の花、桜や花桃など春の花の盛りは過ぎていますが、暑くもなく、寒くもない気候のこの季節は、自然の美しさに心が洗われます。西洋でも「スプリング エフェメラル」と言って、人々が到来を待ち望んでいる季節のようです。この言葉は、直訳的には「儚いものたち」だそうですが、通常は「春の妖精」と訳されています。

 ずいぶん前にこの言葉を知って以降、早春から春の季節が大好きになりました。寒さから解放される季節であることも、もちろん、理由ですが「スプリング エフェメラル」という言葉の響きと「春の妖精」との言い方が気に入っています。

 難題山積ではあるものの、せっかくのGW。旅行と言いたいところですが、旅行は、憂いなく、存分に楽しめる状況ではなさそうです。旅行に比べて移動距離も比較的少なく、近場で楽しめる施設に美術館があります。感染対策もしっかりしている静かな空間でアートを鑑賞するのもコロナ禍のGWだからこその過ごし方ではないでしょうか。

 アート鑑賞の意味というか、効果については、アートを鑑賞することで内在している思いが具体的なイメージとなって浮かびあがってくると言われることもあります。何となくモヤモヤしていた気持ちが突然、すっきりする、といったこともありそうです。あるいは、豊かな気持ちになる。

 そのアートですが、以前、このコラムで「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?経営における『アート』と『サイエンス』」(光文社)で筆者の著作家・経営コンサルタントの山口周さんが、アートの重要性を指摘していることに触れたことがあります。VUCA(不安定、不確実、複雑、曖昧の英語の頭文字)の時代における意思決定では「アートが先導し、サイエンスとクラフトが脇を固める」ことが有効だと。

 GWのひと時、思いついて足を運んだ美術館でビジネス遂行に役立つ「気づき」が得られるかも知れません。「春の妖精」には出会えないでしょうが、難題山積の日常をしばし、忘れて、非日常の世界につかるだけでも十分だと思いますがいかがなものでしょう。               

  (聖生清重)