FISPA便り「コロナ禍でも国内供給量は増加」

 コロナ禍でも衣類(外衣、下着、補正着、乳幼児用の合計)の国内供給量(生産量+輸入量-輸出量)は減少せず、増えている、という結果になりました。日本繊維輸入組合が、毎年、まとめている「日本のアパレル市場と輸入品概況2022」の「衣類の生産と輸出入の推移」によると、2021年の衣類の国内供給量は36億4288万点で前年に比べ2・0%増加しました。

 日本のアパレル市場は、特に日本が得意とする中間ゾーンの不振が長引くなかでのコロナ禍で、厳しい状況に置かれています。加えて、アパレル業界では、環境意識の高まりを背景に、アパレル製品の廃棄問題が報道されたこともあって「アパレル供給は過剰」だとの認識が高まり、アパレル企業などアパレル関連各社は「アパレル製品の適正供給」に舵を切ったと見られています。

 それだけにコロナ禍2年目の2021年の国内供給量の動向が注目されていました。その結果は、微増でした。この数字をどのように受けとめたらよいのでしょう。同年の市場動向を見れば、コロナ禍で消費量が増加したとは思えません。にもかかわらず、微増とは言え、増加したことは予想外と言えるのではないでしょうか。それとも、適正供給が数字に表れるのは2022年からなのでしょうか。

 供給の中心である輸入ですが、2021年の衣類の輸入浸透率(輸入量÷国内供給量×100%)は98・2%で前年に比べ、0・2ポイント上昇しました。輸入浸透率は、もうこれ以上の上昇は不可能と思えるほどの水準ですが、これもわずかとはいえ上昇しました。

国別では、中国からの輸入が前年比4・9%増の22億3268万点で、全体の62・4%を占めています。昨今、進んでいた生産のアセアンシフトですが、ミャンマーは政情不安からでしょう、減少しています。アパレル生産地としての中国の高い存在感は変わらないようです。

 一方、国内生産は7543万点、前年比6・7%の減少で、減少傾向に歯止めがかかっていません。国内生産は2017年に1億点を割り込んだあとも、毎年、減少しています。中国のコストアップから国内生産への回帰が伝えられることがありますが、現実的にはそうなっていません。このままだと、国内生産品は、ますます“希少”なものになりそうです。

 そうした中で輸出が、数量は869万点とわずかですが前年比8・2%の増加となりました。中古衣類が増加したのかどうか、内容はわかりませんが注目したい動きです。

 国内供給量は、2013年の42億8032万点をピークに年々、減少していますが、2021年の36億点強の数字は何を示唆しているのでしょう。

(聖生清重)