FISPA便り「やはり、そうなんだ」

 「やはり、そうなんだ」と思いました。ポストコロナ時代には深刻化すると思われる人材確保に関する情報をネットで求めていたら、興味深い情報に出合いました。日本ショッピングセンター協会(日本SC協会)が実施している「人材確保に関する定量調査」です。

 それによると、デベロッパー会員へのウエブアンケート(309社、有効回答84社、調査期間21年12月1日―22年1月11日)で「SC内テナント従業員の充足度」は2016年度には「充足していない、やや充足していない」が28%だったのに対し、2021年度は58%になっています。

 また、テナント会員への同様のアンケート(263社有、効回答43社)で「店舗の社員数は充足しているか」聞いたところ、「充足している、おおむね充足している」が2019年度の61%だったのに対し、2021年度には42%に低下しています。

 この調査で人材確保に苦しんでいることが明示され「やはり、そうなんだ」と思った次第ですが、もうひとつの「そうなんだ」は賃金に関することです。「店舗社員の就業率向上のための取り組みで効果が高いと思われるもの上位3つ」を聞いた結果は「賃金アップ」が第1位です。正社員、非正規社員ともそうです。

 第1位の賃金アップに続いて第2位は正社員が「成果に応じた評価体系」、非正規社員が「非正規社員から正社員への登用」、第3位は正社員が「表彰報奨制度の充実」、非正規社員が「成果に応じた評価体系」となっています。

 仕事への意欲をかきたてる方策は、何と言っても賃金ということなのでしょう。もちろん、好きな仕事かどうか、人間関係が良いかどうか、自己実現に会っているか否か、通勤など立地条件なども影響しますが、「賃金」にまさる就業率向上策はない、と言えそうです。

 話は一転しますが、岸田首相は先月29日、10月に策定する総合経済対策で「構造的な賃上げ」を重点にするとの意向を示しました。日本の平均賃金は低迷を続け、韓国にも抜かれて経済開発協力機構(OECD)平均を大幅に下回っていることはご存じの通りです。

 賃上げ→消費拡大・人材確保→企業業績アップ→賃上げの好サイクルが生まれることに反対する人はいないでしょう。中小企業が多い繊維ファッション業界では、「賃上げはしたいけれど…」が現実の企業も多いと思われますが、是非とも、賃上げに踏み切ってもらいたいものです。     

   (聖生清重)