FISPA便り「稀有な会議の真の目標」

 いささか手前味噌かも知れませんが、このコラムの場を提供してくださっている繊維産業流通構造改革推進協議会(通称、繊維ファッションSCM推進協議会)が年に一回開く「経営トップ合同会議」は、数ある会議の中でも稀有な会議です。同会議は、去る13日に東京・有明のTOCビルで開かれました。内容は、当業議会のHPですでに配信していますのでそちらをご覧いただくとして、何故「稀有な会議」なのか、ということです。

 「経営トップ合同会議」は、川上から川下まで、繊維ファッション業界の各段階を代表する企業64社の経営トップが一堂に集まり、悪しき取引慣行の是正、将来のEDI取引を見据えたグローバル・ビジネスにも対応する情報の共有化などを話し合うものです。馬場彰会長の強いリーダーシップのもとに発足し、今回で14回を数えます。

 そう「稀有な会議」のことです。象徴する場面がありました。会議後の懇親会で乾杯の音頭をとった石井銀二郎・一村産業社長がこう述べました。「(取引改革は)『百年、河清を俟(ま)つ、に等しい』と思っていたが、確実に進展している」。馬場会長の強力なリーダーシップと業界全体の(悪しき慣行を野放しにすることの危機感からの)改革意欲が改革を進めた原動力になったと言えますが、会議そのものが発足時から「参加企業は、経営トップの責任において、策定された取り決めについては実践・実行することの義務と責任を持つ」、つまり「稀有な」決まりになっています。

 会議には、繊維ファッション業界の主要団体のほとんどの幹部もオブザーバーで参加します。マスコミ各社の記者も参加しています。会議出席者の発言は、だからすべてオープンで、当然「ここだけの話」は通用しません。

 会議に参加した経産省の片岡進繊維課長は、会議の講評を「年々、内容が充実している。意見表明、質疑とも自由に発言していることがSCMの原動力」と述べました。会議の冒頭、経産省製造産業局の谷明人審議官は「取引慣行の改革は産業の生き残り策。生産性向上、産業競争力強化にもつながる」との期待を表しました。「稀有な会議」は、まだまだ、やるべきことがあるということでしょう。 

                        (聖生清重)