FISPA便り「復権の狼煙(のろし)になれ」
久しぶりに好況感を持続した年末です。毎年のことながら、この時期は、行く年、来る年に思いを馳せる機会が増えます。日本では、今年あったことを忘れる忘年会が好例ですが、お隣りの韓国では、「忘年」でなく今年残したことを来年に送る「送年会」と言うのだそうです。
それはともかく、アパレル・ファッション産業の2014年は、いったいどんな年になるのでしょうか。春先には消費税の増税が待ち構えていますが、円安・株高基調は続きそうで、今年並みの景況感が実感できそうです。しかし、日本のアパレル・ファッション産業は、グローバル企業を巻き込んで、素材から小売りまでの各段階のプレーヤーに根本的な構造改革を迫っている潮流に変化はなさそうです。
潮流とは、ファッション・ビジネスにおける勝利のビジネスモデルが製造卸から製造小売りに変わる中で、ファッション産業の中核企業が「問屋系」から「小売り系」へと移動している現実を見れば明らかです。そうした現実の中で縮小が続く「メード・イン・ジャパン」の生産基盤をどう維持し、再び発展させることができるのか。ことは、好業績を維持している小売り系企業にとっても重要な課題です。まさに「課題の送年」です。
アパレルを中心とするファッション製品の需要そのものは、少子・高齢化が進む国内市場はともかく、人口増が続く地球規模で見れば、成長産業であることは間違いありません。問題は、増加するファッション製品の需要を誰が取り込むのか、でしょう。
こうした状況下、今年はファッション産業に関わる8団体が「日本ファッション産業協議会」(JFIC)を発足させました。日本のファッション産業の発信力、発言力を高めることで産業全体を底上げし、拡大・発展を図ろうというものです。「メード・イン・ジャパン」の認証制度を確立する計画もあるJFIC。日本アパレル・ファッション産業復活の「狼煙」として、何年か後に過去を振り返った時、歴史年表にゴシック文字で記されるような活動を期待して、今年最後の「FISPA便り」とします。どうぞ、良いお年を。
(聖生清重)